昨日記した畑智章写真集の表紙はこれです。
赤い方が英語版(POWER HOUSE刊行)で、白い方が日本語版(赤々舎刊行)です。
当初は、赤い方のデザインが上がってきてそれを両社共通で、と思っていたのですが、
時間が経過するうちに、私は少し別のものを望むようになりました。
たぶん、畑さんから最初に写真を見せてもらったとき、いちばん胸に響いてきた部分、
彼らの「誇り」のようなものをより鮮明に表したかったのだと思います。
誇り、矜持は、この被写体であるドラァグクィーンたちばかりでなく、畑さんの写真にも、
町口景さんのデザインにも通う背骨のようなものだから。
さて、今日、畑さんからいただいたメールの言葉が紹介にもぴったりだったので、本人の
紹介を得て、ここに引用させていただきます。
日本のドラァグクイーンは80年代のNYのクラブシーンを模倣すると言う形でスタートし、日本と言う まさに独自の文化を持つ孤島で進化しました。僕はシモーヌさんが始めた頃のドラァグのシーンを一 部の映像でしか見た事はありませんが、恐らく今回の写真に関して言えば、そのシーンの黎明期から 爛熟期に当たる、狂乱の時代を切り取る事が出来たものだと思っています。 そしてその日本のドラァ グ、というのが、再びNYに逆輸入と言う形で戻ってゆき、出版と言う形で再び世界へと流れてゆく、 という循環を作り出せたのであれば、僕の写真家としての使命はほぼ達成されたと言っても良いかも しれません。そういう意味で、今回の本を見た若い世代の子達が、付け睫毛とウィッグで武装し、欺瞞に満ちた社 会に対して全く別の「欺瞞で」それを無効化し、笑い飛ばし、陳腐な歌をリップシンクしながら、日々 自分たちに押し付けられる「何か」に対して抵抗し、それを破壊していくーそうやって新しい世界を 自らのものにするーそういうきっかけになって欲しいと思います。そういう点で本のお値段がお手頃、というのも本当に良かった(笑)。高い本はお金持ちの年寄りしか 買えませんから。やっぱりこの本は若い世代に見てほしいですし、そうあるべきものだと思います。 時間はかかりましたが、こうやって形になったものを見ると、やはり感慨がありますね。
いやもう本当にありがとうございました。畑智章