写真集「いのちの乳房」の初校を、撮影の荒木経惟さんにお見せするために、新宿のルージュに行く。
どう見ても、テスト校の2回目より出来がよくない。光をまとったような神々しい存在感が出ていなくて悩ましいが、それは必ず果たせるものだ。明確に自分の中にある限り、それを現場の人と共有できると信じている。
ともあれ、これをお見せするのは、、、と躊躇うものがあったが、荒木さんはこの写真集の意義や写真のことやデザインのことを語りつづけられた。
「女のお手本なんだよ」
「時間が写ってるんだよね。それでこの3枚なんだ」
「アートじゃなくて写真なんだよ」
「写真じゃなくて、このひとを感じるだろ」
本当に得難い時間。この写真集が赤々舎に来てくれたことは偶然だけれども、とても光栄なことに感じている。この本の企画者であり、モデルのひとりでもあるひとは、この赤々舎の事務所に初めて来られたとき、
「私の胸を見てもらえますか?」と言った。私の眼の前に、裸の胸があった。
荒木さんは印刷のことをひとこともおっしゃらなかったけれど、それは私たちの仕事なのだ。
どんなときであれ、行くときは、ひとりで行く。