「メイプルソープとコレクター」(原題:Black White +Gray: A Portrait of Sam Wagstaff and Robert Mapplethorpe )というドキュメンタリー映画を見た。
「メイプルソープの成功の鍵は、彼に目を付けカメラを与えたアートコレクターのサム・ワグスタッフにあった。アトリエでのメイプルソープのほか、貴重な映像を公開する。また、ふたりと多くのときを過ごしたパティ・スミスや著名な写真家などが、ふたりがアートビジネスに残した軌跡を語る」
だがこれは、メイプルソープではなく、ワグスタッフという希有なコレクターでありキュレーターにふれようとするものだ。おもしろかった。ワグスタッフがメイプルソープの写真を非常に好きだったのかどうかは私には謎だ。
ワグスタッフがコレクションした雑多な写真、それらがすごくいいなと目を奪われた。
写真がもつセクシャルな引力に強靭に身を投じた人、なのかもしれない。
セクシャルな対象を写したものではなく、写真が本来的にもつセクシャルな引力。そこに身をもって巻き込まれながら、目を開けていた人。
ワグスタッフのセルフポートレートも何点か流れた。即物的なのに遠い気がする。彼は晩年、コレクションの対象を、写真から銀器に移した。
見終わって、誰かに似ていると思った。
考えるまでもなく、スカロのウォルター・ケラーに似ているのだった、私の中で。ビル・ヘンソンの「lux et nox 」は私の大好きな写真集だ。あの本についてケラーと話した時間。lux et nox 「この写真集を再版するときは日本で刷らないか。きみが印刷を見るなら、任せられる」 たじろぐしかなかった重い時間。 いま、どうされているだろうか。写真をふたたび挟んで話すことがあればと思う。