読売新聞「sight」書評

3月6日(日)の読売新聞朝刊の文化面に、朝海陽子写真集「sight」の書評を載せて頂きました。

読売新聞様、ありがとうございます。

以下、記事の転載です。

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   変わった手法のポートレートだ。映画を選んでもらい、自宅のビデオで一緒に見ながら撮影する。ベルリンの女性は暗い部屋で「時の翼にのって」に見入っている。ニューヨークの男性2人は横になって「サンセット大通り」を楽しむ。東京の子供たちは「ホーム・アローン」をにらみ、妙に真剣な表情だ=写真=。
   被写体は6か国9都市に及ぶ。 どんな人が何の映画をチョイスしたのか、ちょっと意外に思ったり、納得したり。考現学風の興味を持たせるところがある。
   ただ、誰もが画面に集中している。いわゆる没入の状態が要所なのだろう。映画の時間が静かに流れ、彼や彼女の内面に堆積していく。物思いに沈む人の肖像に似て、見られているという意識は入り込まない。そんな充足した世界へ、見る者は引き込まれていく。
   朝海陽子は1974年生まれ。最近、注目を集まるが、これが初作品集。(赤々舎、3300円) (前)