八戸 前夜

7月30日夕刻、八戸に入った。
東京から車2台を連ねて8時間のドライブ。東北道は緑が濃く、重たく、それを分け入ってゆく。
隣で旗手浩が、岩手山の美しさを語ってくれる。盛岡に縁のある彼は、その山に登ったことがあるのだという。あいにく雲が垂れ込めて煙る裾野しか見えなかったが、山の姿をそこに仰ぎ見た。
東北の緑は重く、美しい。この緑に支えられてあるもの。


八戸の中心部にある、ポータルミュージアム「はっち」。
浅田政志が「八戸レビュー」で滞在制作・展示を行ったこの場所が、スライドショーの会場となる。設立されてまだ間もない施設なのに、館内は地元のひとで賑わっている。明日は、八戸三社大祭という大きな祭も開かれるのだ。旅にして、その土地の祭に会う、というのはなにか沁み入るような嬉しさがある。
スライドショーが終わったら、皆で祭に出よう。


たしか1月17日の新年会の席だったか、今年はスライドショーツアーをやりたいと誰からともなく声が上がり、それなら今回は夏の東北、とたちまち決まった。前回が北海道だったから、そこから繋げてというような単純な気持ちだっただろう。
そこから半年。思いもしなかった時間が東北に、私たちに流れている。

私たちは、どこから招かれたわけでもなく呼ばれたわけでもなく、こうして東北にお邪魔している。
この土地に来て、見て、会って、そして何に触るのか。写真は、間にしか生まれないだろうから。


もうすぐ、一回目のスライドショーが始まる。
前夜、4時まで調整していた者。朝6時から起き出して構成していた者。
なにか滑稽な気さえする。私たちはこうして勝手にお邪魔して、何に必死になっているのか。
どうかそれを見にきてください。
身体を張って。心を張って。

姫野希美