こちらにて3冊の内容を少しずつご紹介致します。
まずはじめに米田知子 写真集『After the Thaw 雪解けのあとに』。
こちらは2004年5月に、EUに加盟したばかりだったハンガリーとエストニアを、その年の秋に訪れて撮影されたものです。
前半は水ゆたかなハンガリーにはじまります。痕跡の不在と、逆説的な歴史への遡行、今なお揺れ続ける世界の投影を深くたたえているような静謐な青です。
窓の結露にも、まなざしとの間にも、歴史の息遣いが、とても静かにあるようです。
これまで隠されてきたもの、これから明らかとされるもの、今ここにあるもののあわいにー
美術評論の光田ゆりさんに寄せて頂いている文章の一節ですが、そのあわいに揺らいであるようなとてもとても深い青色がでています。
ハンガリーのあと後半には、深い森のエストニアで撮られた写真が続きます。
ソビエト国境警備所の取り外されたソビエトの紋章ーIn-between 9では表紙でした。
見えていないものの立ち上がりが大きくあるような、249×271㎜のサイズの大きい判型になりました。印象もとても変わったようです。
写真の後には四方田犬彦さんのテキストが収録されています。「ない」の過去形は「なかった」ではなく「あった」ー
「風景とは何なのか」というきわめて精緻、精良な問いが、また米田知子さんの写真の1ページずつの風景にまなざしを戻します。
リサーチを重要なプロセスとされている米田さんのキャプションテキストが最後には収録されております。
撮影から10年という節目にあたり、今なお揺れ続ける世界情勢のなか、次代への思いを込めて刊行された
作品集 『After the Thaw 雪解けのあとに』こちらより好評発売中です。ぜひ手にお取りください!
2冊目は上田義彦さんの 写真集『M.Ganges』です。
デザイナーは(こちらも)中島英樹さんです。表紙の布張りは、インド起源の更紗を思わせる、きめ細かい染色がされています。
後半ではなく冒頭に上田義彦さんの文章があります。
潜像をたゆたうようなアウトフォーカス。移動と静止。インドという異境でも、ヒンドゥーという宗教観でもないものに向かいながら、希望と流産がないまぜになったような気配について、後藤繁雄さんがテキストを寄せてくださっています。
屋久島の河に散らばる岩が今回の「ガンジス河」に導く糸になったそうです。(!)
輪郭を失った光と色のうちに、まなざしの記憶がたどるものは何か。
そして最後、3冊目にご紹介するのは、ついに完成したダレン・アーモンド作品集『ダレン・アーモンド 追考』。
本書は水戸芸術館で2013年11月16日から2014年2月2日まで行われた「ダレン・アーモンド 追考」展のカタログです。
人類の叙事詩を光と音で紡ぎ出す時の旅人 ダレン・アーモンド。
作家本人の希望で、経本折りなどを取り入れた、どなたも見たことがなかったかもしれない、特殊な造本になっています。
技巧的な素晴らしさも含めてお伝えするために、こちらはまた別に動画などでもご紹介していきたいとおもっています。
映像5作品が5つの冊子になり、インスタレーションビューやテキスト冊子を含めた6冊セットの『ダレン・アーモンド 追考』はこちらからお求め頂けます。
刊行が続き盛り沢山になってしまいましたが、3冊ともどうぞ宜しくお願い致します。
米田知子 写真集『After the Thaw 雪解けのあとに』はこちらからお買い求めいただけます。
上田義彦 写真集『M.Ganges』はこちらからお買い求めいただけます。