写真集『沖縄のことを教えてください』の初沢亜利さんが、東京・渋谷のアツコバルー arts drinks talkにて
写真展「周縁からの眼差し」~東北・北朝鮮・沖縄 報告~を開催されます。
被災地東北、北朝鮮、沖縄というこれまでの三つの作品を一度にご覧いただける機会となります。
10月31日(土)の初日にはどなたでもご参加いただけるオープニングパーティー、
11月5日(木)には、いとうせいこうさん×初沢亜利さんのトークイベントも開催されます。
皆さまお誘いあわせのうえ、ぜひ足をお運びください。
初沢亜利写真展
「周縁からの眼差し」~東北・北朝鮮・沖縄 報告~
「権力と写真」
初沢亜利
2010年~2015年、被災地東北、北朝鮮、沖縄を廻り3冊の写真集を出版した。
東京でしか暮らしたことのない私が日本の周縁に降り立ち、権力の中枢を眺め返した時、我が身に染み付いた無自覚な権力的思考に直面させられることになった。
権力者の善意すら暴力と紙一重であることを改めて学ぶ年月だった。
文化的背景も、直面する課題もそれぞれに固有であり、3つの地点を並列することは、それこそ暴力の上塗りになりかねないが、逆照射される東京景だけは、どの地点から見ても変らなかった。
中央と地方、旧宗主国と旧植民地、多数民族と少数民族。
問題の所在が抑圧される側ではなく抑圧する側にある、という自覚は多くの人にとって受け入れ難い。
北朝鮮問題、沖縄問題、言葉そのものが暴力性を露呈する。
哀れな被災地、極悪非道の北朝鮮、楽園としての沖縄。
眼差す側が存在論的不安から逃れるために、不都合な周縁を特定のイメージで囲い込むことから暴力はスタートする。
イメージ化された現場の内奥にある「日常」を撮っているのですね?という軽率な質問にはこう答えるしかない。世界には「日常」しかありません。
確かに世界は不条理と不正義に満ちている。そして、不正義を解消することは最終的には抑圧者にしかできない。
北朝鮮との国交正常化も、沖縄への米軍基地の過剰負担も、我々本土人、日本人の手で克服するほかはない。
全ての不正義を解消してもなお不条理は残る。
私の意識で制御できない、私の意のままにならない。それが世界と写真に共通する本質だ。
世界にも写真にも中心はなく、撮影者の意思そのものも中心点にはならない。
「必然」に引き寄せたい欲望と不安の先に「写真」はいつでも存在する。
「私」が安心を求めてカメラを用い、安易に他者や地域に同化し状況を物語化すると写真は必ず閉塞する。
世界は私の思惑と関係なく存在している、という不条理に耐える胆力こそが、写真を解放するための唯一の道ではないか?
抑圧−非抑圧の二項対立のどこに立っているかを片時も忘れず、同時に多方向的に入り乱れる意思を集約することなく包摂し印画紙に定着させられるか。
私は不正義を解消しうる人間性に希望をもち、なお逃れられない不条理に喘ぐ人間を肯定する。
過去、現在、未来に渡り人間存在を全肯定すること。それが私にとっての写真的美学だ。
抑圧者として周縁を廻る5年の旅はひとまず終わった。
撮り手と見る側が美意識と不条理を共有しつつ、なお内なる不正義に意識を開いていく。
そんな展示を目指している。
それが写真家の挑戦であり、見る側にとっての挑戦でもある。
会期
10月31日(土)~11月22日(日)
水 - 土 14:00 - 21:00
日・月 11:00 - 18:00
火曜定休
入場料
¥500 (includes a drink)
イベント
オープニングパーティー
10月31日(土) 19:00~21:00
入場無料
初沢亜利 × いとうせいこう トークイベント
11月5日(木) 19:00~21:00
¥1000 (includes a drink)
※当日受付のみ。
会場がいっぱいになりましたら入場を制限させていただきますので、予めご了承ください。
場所
〒150-0046 東京都渋谷区松濤1-29-1 クロスロードビル5F