世界 / THE WORLD

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世界
岡田敦写真集
5,000円+税 | 364×249mm | 170頁 | 並製
アートディレクション : 秋山伸


THE WORLD
Photographs by OKADA Atsushi 


5,000JPY | 364×249mm | 170 page | softcover
Art Director : Shin Akiyama

ISBN: 978-4-903545-83-7
Published in October 2012





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About Book 


第33回木村伊兵衛写真賞を受賞した、最も注目すべき写真家・岡田敦の5年ぶりとなる新作。

本作では写真集『I am』で発表したポートレートの写真に加え、海や杉林などの風景写真といった新しい作品展開を見せている。目の前の世界を深く見つめ、内なる世界を捉えようとする写真のなかに、既存の意味や価値を脱ぎ去った、崇高な美しさが立ち現われる。







「世界」

 神々が住む神秘の湖は、かつて人間が近づいてはいけない恐ろしい場所だといわれていた。周囲を絶壁に囲まれ、濃霧で湖面を見ることさえ難しいその湖は、神々が住む美しき場所であると同時に、恐ろしい場所としてこの世界に存在していた。美しさと恐ろしさ、人はそうした相対するものが同居しているものの中に、崇高なるものを見いだしてきたのかもしれない。

 美は時々わたしを混乱させる。それは微笑ましい美しさよりも、不安や緊張、恐怖や哀しみを伴っている美しさに突き動かされることがあるからだ。それは、大自然の中に、神の存在と同時に人間の生命を脅かす自然の猛威を感じてきた先人たちの感覚と通じるものがあるのかもしれない。

 人間がこれまで構築してきた世界という概念は、時代や文化とともに変化してきた。たとえ文明の発達により、世界のあらゆることがこれまで以上のスピードで解明されようとも、人間が世界のすべてを把握することなど決してできない。世界は常に不確かで、わたしたちの目の前で変容し続けている。

 わたしは写真を撮ることによって、より深く世界を認識したいと思っている。それは、物理的な距離の移動や時間の経過によって世界を把握することでは決してなく、より深く世界を見つめることによって、より深く世界と交わり、より深く世界を認識することである。

 大海原を目の前にした時、人は何故自分の存在の小ささに気づくのだろうか。不確かな世界を認識することによって、わたしは「わたし」という存在を発見する。不確かな「わたし」という存在を発見することによって、わたしは再び世界を認識する。世界とわたし、それは複雑に交じり合い、入れ替わる。見え難いものを見るために、わたしは写真を撮るのだろう。

岡田 敦


By recognizing the uncertain world, I find the existence of "I".

By finding the uncertain existence of "I", I recognize the world again.

In order to recognize something hard to do, I take photographs.


July24, 2012 OKADA Atsushi

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"The World" could be viewed in a number of different ways. On the one hand, it's a response to the events of the disasters that rocked Japan in 2011, while at the same time it functions as a kind of personal diary of the photographer. Perhaps it's best understood in terms of other photographic production happening in contemporary Japan, which values a highly personal expression over a clarity of concept: in a very lyrical, abstract way, Okada is attempting to express the unexpressable. There's a focus on nature throughout the book, as well as photographs of areas affected by the tsunami of 2011, and it seems fair to say that in the wake of the Great Tohoku Earthquake, Okada is questioning the relationship between humans and nature. These photographs of natural phenomena are interspersed with studio images of women in various states of undress, but it's difficult to say that they are meant to represent unconditional "beauty." Okada is not trying to present a simple statement about "The World." Instead, he recognizes the difficulties in his subject, and has incorporated them into his own work.



Book Previews

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Artist Information

岡田敦|Atsushi OkadaHP

1979年北海道生まれ。
2003年大阪芸術大学芸術学部写真学科卒業。
2008年東京工芸大学大学院芸術学研究科博士後期課程修了、博士号取得(芸術学)。
木村伊兵衛写真賞受賞作の『I am』(赤々舎)は国内外問わず多くのメディアに取りあげられ話題となる。2010年、写真集『ataraxia』(岡田敦、伊津野重美、青幻舎)、iPad / iPhoneアプリ"ataraxia [photo theater]"(写真:岡田敦、楽曲:守時タツミ、開発:Excite)を発表。同年、映画「ノルウェイの森」(原作:村上春樹、監督:トラン・アン・ユン、主題歌:ザ・ビートルズ)の公式ガイドブック(講談社)の撮り下ろし企画などを手掛ける。2011年、小説『月光川の魚研究会』(著者:星野青、写真:岡田敦、ぴあ)を発表。その他の写真集に『Platibe』『Cord』(2003年、共に窓社)などがある。海外からの注目も高い、新進気鋭の写真家である。

- 受賞 -
2002年 富士フォトサロン新人賞
2008年 第33回木村伊兵衛写真賞

Born in Hokkaido, Japan, 1979.
Graduated from the Osaka University of Arts, Department of Photography in 2003.
2005 Completed Graduate School of Arts, the Tokyo Polytechnic University. Earned M.A degree
2008 Completed Graduate School of Arts, the Tokyo Polytechnic University. Earned Ph.D. [Dissertation : Wrist Cut -A photographic exploration of identity-]

- Award -
2002 Fuji Photo Salon the New Face Prize
2008 the 33rd Kimura Ihei Photography Award

- Publication -
2003 'Platide', 'Cord'
2007 'I am'
2010 'ataraxia'