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 ぼうっとして、テレビを見ていた。さまざまな分野で日本が世界で何番目かを面白おかしく伝えるヴァラエティ番組で、その時は世界で離婚率が一番高いというベルギーを取材していた。ベルギーでは離婚率が70パーセントで、本屋には複雑な家庭で育つ子供のために、いろんな人間関係を学ぶ絵本のコーナーがあるという。10分ほどの現地の映像の後にスタジオにカメラが戻り、ひな壇に並ぶ男性タレントのひとりが言った。「日本はまだ幸せだよね、離婚が少なくて」。
 無邪気にこう公言する若い日本男性の心性と、ルワンダで大量虐殺を実行し、女性をレイプした男たちはひとつながりのものだと言ったら、非難されるだろうか。
 ベルギーで離婚率が高いのは、言うまでもなく、離婚しても経済的にも精神的にも独立して生活していけるだけの社会的地位と、離婚に対して差別も偏見も不利益も蒙らない環境を女性が獲得したからだ。シングルマザーの貧困率が高く、仕事がなく、家庭内暴力を受けていても精神的に依存していたら、離婚することもできない。  ジョナサン・トーゴヴニクが写しているのは、ベルギーとは正反対の社会に住む女性たちである。彼女たちはジェノサイドの際にレイプされ、エイズをうつされ、妊娠し、敵の子供を産んだ。父権制が極めて強固なルワンダでは、子供は父親の一族とみなされる。被害者である女性と子供は家族や地域社会から拒絶され、偏見に晒され、困窮と病気の渕に沈んでいくことになるのである。
 「民兵たちは、これから私たちを暴行すると言いました。ただし『結婚する』という言葉を使って。おまえたちの息が絶えるまで結婚してやる、と」という言葉を他人事のように聞ける社会に私たちは生きていない。トーゴニクが写す彼女たちの威厳あるまなざしから私たちは一人として逃れられないのである。
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