中国好運 / GOOD LUCK CHINA

bk-eric-china-02.jpg
中国好運
ERIC 写真集
7,777円+税 | 297 × 280 mm | 138頁 | 上製本
アートディレクション : 川名 潤
GOOD LUCK CHINA
Photographs by ERIC
7,777JPY | 297 × 280 mm | 138 page | hardcover
Art Director : Jun Kawana
ISBN : 978-4-903545-38-7
Published in November 2008








amazon_cart.gif

About Book

あとがきより

私は香港に生れた。1997年に中国に返還されるまで、香港は一世紀半の長きに渡り、イギリスの統治下にあった。その環境に生れ育った私には「自分は中国人よりもあらゆる点で優れているのだ」という自意識が形成されていた。ほんの数年前まで、私は中国人の姿をしたイギリス人で、欧米人が陥りがちな偏見にどっぷりとつかり、染まっていた。それは私固有のことではなく、香港人の大多数が、今日でも、大なり小なりそうなのだ。そんな私が日本に来て、写真家としてのキャリアをスタートし、スナップ写真の経験を積むために、エジプト、ハワイ、北米、南米と世界を廻り始めても、中国での撮影だけは自意識に災いされて、かたくなに拒んできた。私はいわば「食わず嫌い」の状態にあった。

2005年、私が中国へ行ったのは気まぐれからとしか言いようがない。それまで撮り進めていたシリーズが終わりを告げていたこと、旅費が安価であることといった事情もあったが、自分の「食わず嫌い」が正当なことを一度実証しておこうという底意地の悪さがあったのかもしれない。しかし、その旅において、私の自意識は「そんなバカな」と抵抗していたが、心の奥が、また体のすみずみまでが、肯定的な感覚を引き起こしていたのだった。写真家である私にとって、カメラは世界認識のための武器であり、撮影はその実戦使用にあたる。その強力な武器が、私の「食わず嫌い」を支えていた偏見による自意識を、ものの見事に粉砕してくれたのだった。カメラによって、私は中国に直面したのだ。そして私は、自分が香港以外で初めて感情移入のできる被写体に出会えたことに気付いた。そのことが、心の奥や体で感じる肯定的な感覚の原因であった。日本で日本人を写すとき(また、諸外国で彼地の人々を写すとき)、私は、その被写体になんの感情移入もせず、その意味では外側から捉えて、ただ「おもしろさ」を基準にシャッターを切ってきていた。ところが、私にとって外国である中国で、中国人をファインダーに捉えると、私は自分が全く意図しなくとも、自然に感情移入をして、その意味で内側から撮影していることがありありと実感された。ファインダーで見ると、中国人が香港人と見分けがつかなくなるというのではない。雰囲気を含めて、そこに見られるのはまぎれもなく中国人だ。にもかかわらず、感情移入が成立してしまうのだ。それは、私にとって実に驚くべきことだった。

<※中略>

中国での撮影は終わっていない。
旅の間、移動のとき、私はふと、自分が遠い将来に還り着くべき故郷を探しているのではないかと感じられてくることがある。その究極の故郷のイメージはかすかで、ほとんど抽象的だが、私の心の最も奥処に確かに潜んでいる。それは母から受け継いだものだ。そして、母は彼女の母から。「遥かな昔、私はここに生まれ、長じてここを後にし、そうして一個の人間としての人生を始めたのだ」と心から思える地に行き着けるだろうか? それはわからない。
中国はとてつもなく広大だ。
私の旅はまだまだ続く、十億を軽く超える人々との、新しく、そしてなつかしい邂逅を繰り返しながら。

中国好運

ERIC



ERIC was born in Hong Kong and lives in Japan, but he did not visit China until 2005, when he took the pictures that would become "GOOD LUCK CHINA." Although ERIC cannot speak Mandarin, he says that he felt a special connection with the Chinese people as he photographed them--something he'd never felt before when photographing people around the world. The photos in "GOOD LUCK CHINA" show this interest in people: each page shows a candid portrait of one or more people, shot in rich color. (Perhaps it's no accident that there's red in almost every photo.) ERIC takes the same direct look at people throughout China, including far-flung locations like Tibet and Inner Mongolia, as well as Beijing, which was in preparation for the 2006 Beijing Olympics. The large size of "GOOD LUCK CHINA" complements his 6x7 shots well.

Includes an English translation of text by the photographer.

Book Previews

SimpleViewer requires JavaScript and the Flash Player. Get Flash

Artist Information

エリック|ERIC

1976年 香港生まれ
1997年 来日
2001年 専門学校東京ビジュアルアーツ卒業 /「蓄積と未来」でコニカフォトプレミオ大賞受賞
2002年 「一日と永遠」で第19回写真ひとつぼ展グランプリ受賞
2004年 「every where」で第2回ビジュアルアーツフォトアワード大賞受賞
2008年 「中国好運|GOOD LUCK CHINA」(赤々舎)刊行
2009年 「中国好運|GOOD LUCK CHINA」で第9回さがみはら写真新人奨励賞受賞


[ 主な写真展 ]
2002年 「蓄積と未来」(コニカプラザ / 東京)、「裏と表」(ビジュアルアーツギャラリー / 東京)
2003年 「一日と永遠」(ガーディアン・ガーデン/東京、ビジュアルアーツギャラリー / 大阪)
2005年 「日本ファミリー」(プレスM / 東京)
2006年 「cold snap」(新宿ニコンサロン・大阪ニコンサロン)
2007年 「eric flash」(プレスM / 東京)などがあり、写真集に『every where』(東京ビジュアルアーツ)
2008年 「中国好運|GOOD LUCK CHINA」(新宿ニコンサロン・大阪ニコンサロン)
2009年 「中国女|Chinawoman」(赤々舎)



[ コレクション ] 清里フォトアートミュージアム


1976 Born in Hong Kong
1997 Moved to Tokyo
2001 Graduated from Tokyo Visual Arts, Department of Photography
2001 Awarded Konica Minolta Foto Premio Prize
2002 Awarded 19th 'Hitotsubo' Photography Grand Prix
2004 Awarded 2nd Visual Arts Photo Award Grand Prix