Publishing



原写真論cover.jpg
   

 今福龍太『原写真論』
    space01.jpg

  Book Design:佐藤篤司

  発行:赤々舎

  Size: H185mm × W148mm
  Page:344 pages
  Binding:Softcover

  Published in June 2021
  ISBN
978-4-86541-135-5



¥ 3,000+tax 

国内送料無料!

【国内/Domestic Shipping】 

お支払い方法は、銀行振込、郵便振替、
クレジットカード支払い、PayPal、PayPay よりお選び頂けます。

【海外/International Shipping】
Please choose your area from the two below
      


 


About Book


写真が生まれる場所に潜んでいた〈原写真〉という衝動を、
イメージ発生の現場に追い求めた鮮烈で厳格な批評の集成。


本書は、文化人類学者・批評家である今福龍太氏が、これまでさまざまな媒体で発表してきた写真論、批評的エッセイから、自身の批評の一つの到達地点を簡潔に示すという意図によって厳選しまとめられた、2000年以降に発表された批評テクストの集成である。

"写真そのものではなく、その前に、その背後に、あるいはその彼方にあって明滅する「世界」と「眼」とのむすびつきの「原史」" に一貫して関心を抱きつづけてきた氏の筆は、写真が生まれる場所に潜んでいた〈原写真〉という衝動を推度し、山村雅昭、大原治雄、ブロツキー、ペドロ・メイヤー、東松照明、レヴィ=ストロース、ミゲル・リオ・ブランコ、多木浩二、セバスチャン・サルガドなどへの省察を通し、写真が生まれた場所を問いかける。
〈原写真〉という、写真の感情、意思、欲望、衝迫、痛み、そして希望─。
写真が日常を覆い尽くし、私たちの注視の眼からこぼれ落ち、思考の対象としては見過ごされてゆく、「撮るまえに撮られてしまっている」時代に抗する一冊である。




《目次》

 Prologue  顔が顔であった時代に 


I

 「瞬間の歴史」を証す人 大原治雄とブラジル
 「ここではない場所」への想像力 ブロツキーあるいは都市への不可能な帰郷 
 親密さと聖なるもの ペドロ・メイヤーの〈ディジタルな真実〉
 サルガドの「大地」(テーラ)とともに 

II

 映像による占領 戦後日本における写真と暴力
 長崎から、時の群島へ
 ユートピアの震える風カメラを持ったディオゲネス 


III

 時の地峡をわたって レヴィ=ストロースと写真
 眼と眼のはざまに砂漠が アブ・グレイブを目撃しないこと
 墓標を残すな! 
 家々は海深く消え去りぬ 多木浩二の〈反│建築写真〉


  E p i l o g u e  大地の平和、映像の平和

 
 あとがき

 初出一覧
 図版資料出典

----------------------------------------------------------------------------------------------------------------------


" 〈原写真〉とは定義しがたい謎のような運動体である。それは「世界」じたいが内部に持つ、イメージの豊かな生産力のようなもの。
外界からの刺戟によって写像イメージを生みだす、なんらかの情動やメカニズムがたしかに世界にはあったのである。近代の写真術の発明とは、その内在的な力の必然的な帰結に過ぎないのではないか。私はどこかで、写真そのものではなく、その前に、その背後に、あるいはその彼方にあって明滅する〈原写真〉としか呼びようのない「世界」と「眼」とのむすびつきの「原史(ウアゲシヒテ)」(ベンヤミン)に、ひたすら関心を抱きつづけてきたのだと思う。(「あとがき」より)" 


----------------------------------------------------------------------------------------------------------------------


"あなたが、写真が生まれる場のことを「暗い部屋」ではなく「明るい部屋」と呼んだとき、私のなかのなにかが変わった。買ったばかりのその本の活字を、ブリュッセルからパリまでの急行列車のなかでひたすら追いつづけた。暗闇の謎から生まれるはずの解釈の言葉は、車窓を飛び去ってゆく田園風景のように後ろへ逃げていった。私から、それとも、私が考える「写真」なるものから? ことばをもって考えるということの普遍性が立ち去った車窓に、とるにたらないと思われていた個別性の光がフランドルの夕暮れの斜光とともに差し込んだ。眩いほどのヤコブの梯子。明るい天穹から降りてくる天使たち。あなたの本にはさまれた、一人の黒人奴隷の写真から発する視線に私は射られた。パリのベレー帽の少年が抱える子犬の虚ろで漆黒の眼を見て涙が流れた。明るい未知の部屋のなかで、私は新しい旅を信じはじめた。"





Artist Information 


今福龍太 (Ryuta Imafuku)


文化人類学者・批評家。一九八〇年代初頭からラテンアメリカ各地で人類学的なフィールドワークに従事。早くから写真、映画、音楽、メディア、スポーツ、文学等の領域でも旺盛な批評活動を展開。二〇〇二年から奄美・沖縄・台湾の群島を結ぶ遊動型の野外学舎〈奄美自由大学〉を主宰。ブラジルのサンパウロ・カトリック大学でも随時集中セミナーを持つ。著書に『ミニマ・グラシア』『薄墨色の文法』『ジェロニモたちの方舟』『レヴィ゠ストロース 夜と音楽』『ヘンリー・ソロー 野生の学舎』(讀賣文学賞)『ハーフ・ブリード』『ブラジル映画史講義』『宮沢賢治 デクノボーの叡知』(宮沢賢治賞・角川財団学芸賞)『サッカー批評原論』ほか多数。二五年にわたる対話を集成した『小さな夜をこえて』もある。主著『クレオール主義』『群島─世界論』を含む新旧著作のコレクション《パルティータ》全五巻(水声社)が二〇一八年に完結。





Related Items












nagasawa_cover.jpg
   

 長沢慎一郎『The Bonin Islanders』
    space01.jpg
  Art Direction:林規章
  Book Design:乗田菜々美

  発行:赤々舎

  Size: H223mm × W297mm
  Page:128 pages
  Binding:Hardcover

  Published in June 2021
  ISBN
978-4-86541-137-9




¥ 6,600+tax 

国内送料無料!

【国内/Domestic Shipping】 

お支払い方法は、銀行振込、郵便振替、
クレジットカード支払い、PayPal、PayPay よりお選び頂けます。

【海外/International Shipping】
Please choose your area from the two below
      







About Book


小笠原の先住民がもつアイデンティティを可視化し、
見えづらい複雑な歴史を提示する



東京から南に1000キロ、世界自然遺産に登録されている小笠原諸島父島。
かつて無人島だったこの島は、幾つかの歴史の転換点を経ることになる。
1830年、5人の欧米人と20人のカナカ人が初めて入植したが、1873年に正式に日本領土とされ彼らは帰化することになった。
日本からの入植はすぐに始まり、彼らは欧米系先住民と呼ばれるようになる。
やがて、第二次大戦時に島は要塞化し、全島民は本土に強制疎開させられた。
終戦後はアメリカ海軍の占領下に置かれたが、GHQが帰島を許したのは欧米系先住民だけであった。
占領は1968年まで23年間つづき、彼らはアメリカ文化の中で生活した。日本返還を知らされたのは返還直前だったという。

MUJIN(無人)ーBUNINーBONIN と変化した呼名。
占領時代の出生証明書やパスポートにも記載された、「Bonin Islandes 小笠原人」というアイデンティティ。
政治に翻弄され、周縁に追いやられていった彼らの歴史を、著者は丹念にリサーチし、ひとりひとりのポートレートと風景写真を13年かけて撮りつづけた。風景はただ美しいだけでなく、島民にとって重要な意味をもつ場でもある。

東京都の島でありながらどこからも遠くにある小笠原。
その知られざる歴史とそれを宿す人々を静かに物語る写真集。



「俺たちはアメリカ人でも日本人でもない小笠原人だ!」 南スタンリー
 We aren't Americans. We aren't Japanese. We are Bonin Islanders!    Stanley Minami



「辛抱強く島民との間に有意義な関係を築き、彼らの歴史やアイデンティティについて理解を深めたことで善循環が起き、長沢は島民や彼らの大切にしてきた場の、より豊かで誠実なポートレートを撮ることができた。
写真家と島民の相互協力の結果が、この写真集だ。この本に収められたふくよかで外連味のないポートレートは、小笠原人たち「を」ではなく、彼ら「と」撮られた珠玉の作品である。

デイビッド・オド 寄稿「長沢が撮った小笠原」より
contribution Text:David Odo (Harvard Art Museums )





The Bonin Islanders 

Shinichiro Nagasawa


The island of Chichijima is located at 27°north latitude (about the same as the Okinawa Islands) and 1,000 km far south of Tokyo. With no airport, it takes 24 hours to get there from the Takebashi wharf in Tokyo. With a subtropical climate and many endemic species found nowhere else in the world, it is also known as the "Galapagos of the East". The group of islands that includes Chichijima is listed as a natural UNESCO World Heritage site.


Chichijima used to be uninhabited. The name of the group of the islands ("Bonin Islands") is taken from Japanese word for inhabited ("無人:mujin"); the pronunciation changed from "mujin" to "bunin", and ultimately to "bonin".These extremely remote islands have a complicated history.

It goes back to the 19th century.


In 1830, five Europeans and twenty Canadians arrived at Chichijima via the Hawaian Sandwich Islands as the first settlers. The island then developed into an important harbor that provides food and fuel to whaling boats from all over the world. At various times, America, Britain and Russia attempted, in vain, to take control of the Bonin Islands. In 1873, the Bonin Islands were officially declared Japanese territory, which forced the islanders to become Japanese citizens. Many people from the main islands of Japan subsequently moved there, and the original settlers were differentiated as "Western Islanders".
By the time of World War II, the population of Chichijima grew to about four thousand. During the War, Iwo-jima and other islands became the sites of fierce land battles and were converted to forts for the Japanese army. All the islanders were forced to evacuate to mainland Japan. After the War, the Bonin Islands were occupied by GHQ until 1968. The GHQ allowed only "Western Islanders" to return, and for 23 years, every aspect of islandersʼ life, including language and education, was influenced by American culture. They were only informed of the territorial restoration to Japan right before it happened.


About forty years later, I came across an old family photograph in a travel magazine. In front of a thatch-roofed hut were two men and three children wearing kimonos, and they all looked European or American. "Is this really Japan?" The image left a deep impression on me. It spoke of a history, something dramatic, that our textbooks don't tell. I felt an urgent need to take photos of those people. I made my way to Chichijima for the first time in February 2008.[...]


Who are the "Bonin Islanders"?

I kept looking for the answer as I took photos. They lived alone for 46 years, from when the first settlers arrived until Japanese territorialization in 1876.

It was a racially mixed international community. Many Japanese moved in

too afterwards. There wasnʼt a so-called traditional or unique culture. As I proceeded, I realized that the identification of "Bonin Islanders" is limited to those who were born before the GHQ occupation. It took even longer to realize that this was underpinned by the birth certificates and passports that the American army issued.

I might have taken too long to finally compile this book. Last year, Aisaku Ogasawara, a clergyman and my first subject, passed away. We also lost George Minami, nicknamed "little George", who always gave me a ride on his boat. Aisaku once told me: "photography has a great power. That's a good thing for us islanders", while Gorge introduced me to the island, saying "this is our Ogasawara." Both of them motivated me greatly. I wish I could have shown this book to them. At the same time, I somehow understand that it is impossible:

the history of Ogasawara (as the Bonin Islands are also called) is so deep and complicated that I needed enough time to prepare. I dedicate this book to them, and I deeply appreciate all the people I met in the process of compiling this book.





Related Contents


YouTube チャンネル 「PHaT PHOTO」より





Aera Dot.  「戦争に翻弄された欧米系島民「小笠原人」を追った写真家・長沢慎一郎」

毎日新聞 2021/5/17  「小笠原人」を撮り続けて十数年 新宿の写真展で伝えたいこと






Artist Information 



長沢慎一郎 


1977 年 東京生まれ。 
2001 年 藤井保氏に師事 
2006 年 独立 
2021 年 5 月 Nikon Salon にて個展「The Bonin Islanders」を開催。 



Shinichiro Nagasawa

1977 Born in Tokyo

2001 Apprenticed toTamotsu Fujii

2006 Independent as a Photographer

2021 The solo exhibition "The Bonin Islanders" at Nikon Salon






nakayama_cover.jpg 
   

 中山博喜『水を招く』
    space01.jpg

  Book Design:大西正一 

  発行:赤々舎

  Size: H210mm × W148mm
  Page:128 pages
  Binding:Hardcover

  Published in June 2021
  ISBN
978-4-86541-138-6



¥ 2,700+tax 

国内送料無料!

【国内/Domestic Shipping】 

お支払い方法は、銀行振込、郵便振替、
クレジットカード支払い、PayPal、PayPay よりお選び頂けます。

【海外/International Shipping】
Please choose your area from the two below
      


 


About Book


干ばつの大地に、井戸を掘り水路を通した中村哲医師とその仲間たち。

ペシャワール会の現地ワーカーとして五年間共に活動した著者が、一人ひとりの懸命な日常を写し留めた写真とエッセイ


「水を招く」は、作家自らが再発見した貴重な写真群と言えます。
2001年から5年間に渡り、ペシャワール会の現地ワーカーとしてパキスタンとアフガニスタンで活動していた中山さんは、中村哲医師とその仲間たちの姿を折々にカメラで写していました。
井戸を堀り水路を通す現場や、家族や信仰と共にある日々の表情。個人的な記録・記憶としてしまわれていたそれらの写真は、やがてその意味を変え、私たちに届けられたのです。
国籍や性別、年齢も職種も関係なく、当時一緒に仕事をしていたという仲間たち─。ここには、劇的な出来事や物語はありませんが、土地に根差して生きるひとりひとりの存在と営みが静かに写しとられ、それに真っ直ぐに向き合う写真家の眼差しが息づいています。
「水を招く」という行為や祈りは、私たちそれぞれの足元にも通うものであろうと深く響いてくるシリーズです。




"本書に収録されている写真は、私がNGO団体・ペシャワール会の現地ワーカーとして、パキスタンとアフガニスタンで活動していた時期に撮影したものです。2006年に帰国したので、かれこれ15年以上も前の話になります。
ペシャワール会は、現地で医療活動を行っていた中村哲医師を応援することを目的として結成された団体ですが、未曾有の大旱魃(だいかんばつ)に直面したことにより、医療活動に加えて、井戸掘り、水路事業、農業と、現地での活動内容は大きく変化しました。
現地で働いていた5年間、私は仕事の合間を縫って写真を撮っていました。そこには、国籍や性別、年 齢も職種も関係なく、当時一緒に仕事をしていた同僚たちが写っています。時にはやんちゃで、それこそ大いに悩ましい問題を巻き起こす連中もいましたが、みんな中村先生と志を共にし、逞しくもユーモラスに活動してきた人たちです。
彼らの奮闘は今もなお続いていて、彼らの家族や現地に生きる多くの人々の暮らしを支えています。それぞれが果たす役割は異なれども、一人ひとりが常に自分の人生を懸命に生きている彼らの姿に、中村先生の言っていた「一隅を照らす」という言葉を思い出すのです。" 

── 中山博喜




"いよいよ通水試験が開始された。最初の通水試験の時もそうだったのだが、出来上がった用水路に水が流れ込む喜びと、漏水などの問題もなく無事に水が流れるのかといった緊張が、心の中を激しく行き来する瞬間である。堰板が外され、塞き止められていた水が少しずつ用水路に広がり始める。この用水路に携わった人々が固唾を飲んで見守る中、しっかりと踏み固められた乾いた地面の上を、水がじわりじわりと這っていく。" (本文より)





Lead The Water 

Hiroki Nakayama


Doctor Tetsu Nakamura and his friends dug wells and created waterways in the drought-stricken land.

《Lead The Water》 can be said that is a valuable photographs that the artist himself rediscovered.

Hiroki Nakayama, who worked in Pakistan and Afghanistan as a field worker for the PMS(Peace Japan Medocal Services)for 5 years from 2001, took photos of Dr. Tetsu Nakamura and his friends from time to time with his camera. They all worked together  in those days, regardless of nationality, gender, age, or occupation.

Here is no dramatic turn of events or stories, but the existence and activities of each person rooted in the land are calm captured, comes to life. 

The act and prayer of "Lead the water" will be one that primitive strikes a chord to each of us too. 





Related Exhibition



中山博喜 個展「水を招く」


会期:2021年5月27日(木)〜6月21日(月)  
時間:当面の間、10:30~16:00までの時短営業
休廊:火・水
会場:リコーイメージングスクエア東京 ギャラリーA
(東京都新宿区西新宿 1-25-1 新宿センタービル MB(中地下 1 階

入場無料


関連記事 AERA Dot.




E2mZZs_VkAE_a_S.jpeg





Artist Information 



中山博喜 (Hiroki Nakayama)


福岡生まれ。大学卒業後5年間にわたり、NGO 団体・ペシャワール会の現地ワーカーとして活動に参加。 活動の傍ら、パキスタン、アフガニスタンの日常を撮影する。帰国後は撮りためた写真を個展などで発表するとともに、色彩をテーマとしたカラー作品の制作を行っている。京都芸術大学准教授。


【写真展】

2008 年 「at PK」

2011 年 「OWN LAND」

2021 年「水を招く」(リコーイメージングギャラリー/東京)  2021年5月27日(木)〜6月21日(月)



210428_flowers書影_01(t)_3.jpeg
    

 奥山由之『flowers』
    space01.jpg

  Book Design:葛西薫  安達祐貴
  発行:赤々舎

  Size: H261mm × W216mm
  Page:152 pages
  Binding:Cloth Hardcover

  Published in May 2021
  ISBN978-4-86541-134-8



¥ 5,000+tax 

国内送料無料!

【国内/Domestic Shipping】 

お支払い方法は、PayPal、PayPay、Paidy
銀行振込、郵便振替、クレジットカード支払いよりお選び頂けます。

【海外/International Shipping】
Please choose your area from the two below
      



 


About Book


花を媒介とした、亡き祖母との対話


奥山由之『flowers』がこのたび重版出来となりました!(2023年10月)


"人以外の被写体を通して人を描く"3部作の1作目である「flowers」は、亡き祖母が暮らしていた家で撮影されました。この場所をいま自身のアトリエとする奥山は、射し込む光に、庭に揺れる草木に、生前の祖母を偲び、多くはなかった会話をあらためて紡ぐように、花を撮り重ねてきました。

80年代に祖父が使用していた110フィルム(ワンテンフィルム)という小さなフィルムを用いて撮影された花々は、部屋のクラシックな意匠やカーテンとも合わさり、花と向き合う自由な視点や角度に引き付けられます。
中でも、窓という絵画的なモチーフを用いて、外部の流動感や瑞々しさと内部のほの暗さを印象づけ、内から外への眼差しや、光の中で花に近づく揺らぎある視点において、祖母と自身とを重ね合わせています。窓に映り込む花と、ここにある花。窓を挟む室内の花と、庭の花。花を撮ることによって無数の対話が交わされます。

内から外への窓越しの眼差しが、あるひとりと向き合う中、そこに織り込まれるキッチンや書斎、寝室など空間を撮った写真には、異質な視覚が生じています。大判カメラのコンタクトシートや中判カメラ、35ミリ、ポラロイドなど様々なカメラを用い、生前の祖母の視点、亡き祖母の漂う視点、そして自身の視点が現れるようです。
一枚の写真における視線の重なり、そして全編を通じての視点のレイヤーは「flowers」の大きな試みといえるでしょう。

また、一冊のなかに融け合う、古い家族アルバム、祖母と共にあった家や家具、そして今を咲く花という時間軸のグラデーションは、写真のフォーマットや手法においても表出されています。祖母が生きていた時代から存在したフォーマットと、片やコンタクトシートのスキャニングや、映像から静止画へと切り出されたもの。全編を通じての視点のレイヤーは「flowers」の大きな試みであり、奥行き、眼差しや感覚の混交に、幅のある時間が息づいています。


本書に登場する花は、フラワークリエイター篠崎恵美(edenworks)さんにより提供された、棄てられてしまうはずだった花々です。
時折登場する花瓶を持つ手、花を差し出す手 ─ 自身であり他者であるだろうその手は、それぞれの記憶に触れるものです。



---------------------------------------------------------------------------------------


  忘れてはいけない。
 
  人は、自分を何かに反射させることで、初めて生かされている。
  物理的にも精神的にも。



                    (奥山由之 あとがきより)

---------------------------------------------------------------------------------------



flowers 

Yoshiyuki Okuyama


"flowers" is the first in a trilogy work that "attempts to depict people through non-human subjects."(The second is "windows") What underlies Okuyama's works, regardless of their incentive or purpose, is his unique visual expression that treats the contradictions and multifacetedness accompanying all phenomena as themes for production, and discerns the essence of photography in the numerous possibilities that fluctuate before and after the moment that is captured. 


"flowers" is an imaginary dialogue between Okuyama and his late grandmother. These photos were taken in her house, which Okuyama uses as his atelier now. The scenes there, such as beams of light entering a room, or trees swaying in the garden, are the remnants of his beloved grandmother. Okuyama photographs them, flowers in particular, as though enacting the conversation with her that he can no longer have.  

For his flower photos, Okuyama uses 110 film, which his grandfather used as well in the 1980s. This miniature film creates a nostalgic atmosphere that works well with the house's classic decor, its unique ambience.

"flowers" are the medium of the imaginary conversation, yet they hint at its impossibility. The out-of-focus image of a flower in the light implies the unreachable. A flower indoors, next to its reflection in the window, or flowers in a vase, isolated from the garden in bloom: these too hint at that gap. The only way to close this distance, the only way to make the conversation feel real, is to keep photographing flowers in his grandmother's house. 

Windows are another key motif in this photobook Okuyama uses them to frame and contrast the energy of the outside world with the dim indoors, and also to convey both the gaze of the artist outward and that of nature inward. 

"flowers" is full of layers. Multiple perspectives coexist in one image. There is also a layer of family history. We see images of the past, such as old family albums and furniture treasured by Okuyama's grandmother, and he juxtaposes old film types and printing formats with new methods: scanned images and freeze-frames. This variety alludes to the number of eyes that have seen, and are still seeing, the lives in the house.




There was a gentle calm in my grandmother's eyes.

She had skinny arms and a hard stoop.

She always wore a purple cardigan.


As I sit in this room all day long,

that is how I remember her.


Curiously enough.

I clearly recall her wrinkles and the tone of her voice,

even though I only saw her a few times a year.


In the late afternoon, the bright light that enters the room

has a color I feel I'm seeing for the first time.

The soft clicks of the shutter dissolve in the light,

accentuating the silence.


What was she thinking about?

To her eyes, how did the light look?


Gazing at the dust neatly gathered by the window,

I slowly release the shutter

with feelings of nostalgia and a little regret.



I must not forget.


We become realized, physically and mentally,

when we reflect ourselves off of other people.



That's why we always want someone

to listen to our stories.

That's why the color of the light must have been

too lonely on her own.



A conversation with my grandmother.

And the portrait of my life.



"flowers"



Yoshiyuki Okuyama





Special gifts for the first customers of the reprint


重版を記念し、小社HPより重版分をご購入の先着120名さまに、サイン本をお届け致します。無くなり次第終了とさせて頂きます。(※こちらの特典付き商品には、赤々舎もう一冊、りんご通信など、その他の特典は付きません)

Signed copie will be given away as a Special gifts for the first customers.The offer will end while supplies last.


flowerssigned01s.jpg






初版先着ご購入者さまに、特典ポストカードをお付けして、写真集『flowers』をお届け致します。
(1000枚限定、なくなり次第終了) →ご好評を頂き、予定枚数を配布終了いたしました。(2021.5/28)

flowers_postcard.jpg





Related Exhibiton



奥山由之 個展 「flowers」


会期:2023年10月25日(水)〜11月26日(日)

時間:13:00〜20:00  ※土日 11:00〜19:00

休廊: 月・火

会場:PURPLE(京都市中京区式阿弥町122-1 3F


関連イベント

①10月27日(金)15:00〜
奥山由之 ポートフォリオレビュー(定員に達しました)

②10月28日(土)17:00〜
竹内万里子 × 奥山由之「flowers」をめぐって(定員に達しました)



past related info:

奥山由之×edenworks Exhibition  "flowers"(2020年)
VOGUE (May 18, 2020)(2020年)





flowers202310-dm3.jpg




Artist Information 


奥山由之 

1991年東京生まれ。
第34回写真新世紀優秀賞受賞。第47回講談社出版文化賞写真賞受賞。
主な写真集に、『flowers』(赤々舎)、『As the Call, So the Echo』(赤々舎)、『BEST BEFORE』(青幻舎)、『POCARI SWEAT』(青幻舎)、『BACON ICE CREAM』(PARCO出版)、『Girl』(PLANCTON)、『君の住む街』(SPACE SHOWER BOOKS)、『Los Angeles / San Francisco』(Union publishing)、『The Good Side』(Editions Bessard)、『Ton! Tan! Pan! Don!』(bookshop M)、台湾版『BACON ICE CREAM』(原點出版)、などがある。
主な展覧会は、「As the Call, So the Echo」Gallery916、「BACON ICE CREAM」パルコミュージアム、「君の住む街」 表参道ヒルズ スペースオー、「白い光」キヤノンギャラリーS、「flowers」PARCO MUSEUM TOKYO、「THE NEW STORY」POST など。



Yoshiyuki Okuyama

Born in 1991 in Tokyo. 
He received the Canon New Cosmos of Photography Excellence Award in 2011 and the Kodansha Publishing Culture Award in Photography in 2016.
Published photo collections include flowers (Akaaka Art Publishing), As the Call, So the Echo (Akaaka Art Publishing), BEST BEFORE (Seigensha)、POCARI SWEAT (Seigensha), BACON ICE CREAM (Parco Publishing; Taiwanese edition, Uni-Books), Girl (Plancton), Kimi no sumu machi (The Town You Live In; Space Shower Books), Los Angeles / San Francisco (Union Publishing), The Good Side (Editions Bessard), and Ton! Tan! Pan! Don! (bookshop M); 

Major exhibitions in Tokyo, As the Call, So the Echo (Gallery916), Bacon Ice Cream (Parco Museum), Kimi no sumu machi (Omotesando Hills Space O), White Light (Canon Gallery S), flowers (Parco Museum Tokyo), and The New Story (Post).





Related Items




bk-windows(t)01.jpg

奥山由之


bk-windows01.jpg

奥山由之
(Out of stock)

bk-asthe2023.jpg


inochi_A4-3.jpg  

 石川竜一『いのちのうちがわ』
      

  Art Direction:町口景 
  発行:赤々舎

  Size:H 340mm x W 340mm
  Page:51 images
  Binding:板表紙+ゴム止め
  Limited Edition:700, Signed

  Published in May 2021
  ISBN
978-4-86541-133-1



 ¥ 13,000+tax

国内送料無料!

【国内/Domestic Shipping】 

お支払い方法は、銀行振込、郵便振替、
クレジットカード支払い、PayPal、PayPay よりお選び頂けます。

【海外/International Shipping】
Please choose your area from the two below
      





About Book




その美しさは完璧なように思え、頭で考えても理解できない感覚や感情はここからきているのだと感じた。個々の存在とその意思を超えて形作られたその様は、生い茂る木々や岩石と重なっても見えた。

自然のうちがわに触れ、その圧倒的な力を思い知らされたとき、物事の区別は緩やかなグラデーションで繋がって、自分自身もその循環のなかにいるのだと感じた。

石川竜一『いのちのうちがわ』あとがきより




本書は、石川が2015年より山に入り自然と向き合うなかで写した51点の写真を収載しています。
「絶景のポリフォニー」や「okinawan portraits」シリーズなどスナップやポートレートにおいて、目の前の存在と状況をできるだけ受け入れながら、一貫して「生」の方向を探してきた石川竜一。自然のなかで常に生死を眼前にし、その境に自身も晒されながら、撮影を続けてきました。
人と自然、個と外、内側と外側との関係がここで新たに見出され、その境界が揺らぐ写真群は、世界に流れる移りや連環、在るということを静かに問いかけてきます。

今回、写真一点ずつを大判のプリントで提示し、その「いのち」と向き合いつつ、そのままの重ねられたかたちとしてポートフォリオブックを制作しました。
全700冊の一冊ずつをお届けできることが、この上ない喜びです。





The Inside of Life

Ryuichi Ishikawa 


The book is composed of fifty-one images that Ishikawa Ryuichi, an Okinawa-born up-and-coming photographer, took in the mountain he had repeatedly visited since 2015.

Ryuichi has published provocative photography books, such as A Grand Polyphony (for which he won the Kimura Ihei Award) and okinawan portraits, in which he consistently contemplates the way of life. By taking snapshots and portraits of everyday scenes, he attempts to take in all the phenomena and existences around him with no bias. In the mountain, Ryuichi found death and life in equal measure. He felt his own existence was dissolving. And yet he kept taking pictures.  

The images in this volume blur the borders between human and nature. They nullify individuality and reverse the roles of the internal and external. We see the transience and connectedness of lives and question what it means to exist. 

The Inside of Life is a portfolio-style book, a compilation of large-format prints that enable the viewers to appreciate every image and life that Ryuichi has been observing intensely.


 

"When I went into the mountains and faced down nature, everything passed as though simply flowing around me, and it seemed like my own will was meaningless. I felt it to be a place where I had to simply face myself, and could only rely upon the senses of my entire body. When the rocks or grass I was desperately clinging to with my hands slipped away over the sheer cliff my head was plunged into chaos and communication with my body was numbed; each time I saw a snow slope filling a gorge the thought of it collapsing away from my feet and burying me passed through my head, rendering me almost unable to stand, my extremities trembling violently.


At all times, life and death were just naturally in front of my eyes. The rainbow trout caught deep in the mountains with nothing in its stomach but a horde of stink bugs; the pool, finally reached at the mountain's peak after crossing into true wildlands, where so many forest green tree frogs had gathered to lay their eggs, only to be attacked by mountain birds; most of those frogs were not completely eaten, but had their eyes squeezed out, bellies ruptured, with eggs leaking thickly out.


In order to survive the days that I spent amid this nature with Mr. Bunsho Hattori, we picked many plants, and captured, killed, and ate animals many times. I was so grateful to acquire something to eat, everything tasted so good. Walking long each day and then eating gave me the sensation of that energy spreading out to every corner of my continually working body, and the more natural something I put into my mouth was, the better it seemed to feel. When I did so, the tinge of regret I felt that I myself had not perished among the workings of nature, the tinge of guilt I felt at my existence within this natural world, and all the thoughts and philosophies that appeared in my head were surpassed by a feeling of being alive that rose up through my body.


The sensations of touching flesh and blood, the smooth and firm feeling of internal organs, their weight, was erotic; the smell unleashed from inside stomachs and intestines increased my worries about coming into contact with bacteria and parasites, and as though responding to this internally myself, my body felt both sick and a surge of excitement. Organs are far more functional than any machine, and their beauty seemed perfect to me; I felt that feelings and sensations that I couldn't understand by simply thinking about them were all coming from here. The sight of them creating something beyond their individual existence and intent overlapped for me with the overgrown trees and craggy rocks.


When I touched upon the inside of life, and was made aware of that overwhelming power, the divisions between all things became connected by a gentle gradation, and I felt myself to also be placed within that cycle."



Extracted from the afterword Ryuichi Ishikawa "The Inside of Life"





コンタクト3.jpg


IBI00.5.jpg  IBI01.jpg

IBI03.JPG   IBI08.JPG






関連展示



石川竜一 個展「いのちのうちがわ」


会期:2021年3月20日(土)〜4月18日(日) 
時間:11:00〜21:00(無休) 
会場:SAI 
(東京都渋谷区神宮前 6-20-10 RAYARD MIYASHITA PARK South 3F)

入場無料








7-DSC_0461s2.jpg




Artist Information 


石川 竜一 


1984年沖縄県生まれ。2010年、写真家 勇崎哲史に師事。2011年、東松照明デジタル写真ワークショップに参加。2012年「okinawan portraits」で第35回写真新世紀佳作受賞。2015年、第40回木村伊兵衛写真賞、日本写真協会賞新人賞受賞。 主な個展に2014年「RYUICHI ISHIKAWA」gallery ラファイエット(沖縄)、「zkop」アツコバルー(東京)、「okinawan portraits」Place M(東京)、「絶景のポリフォニー」銀座ニコンサロン(2015年大阪ニコンサロン)、2015年「okinawan portraits」The Third Gallery Aya(大阪)、「A Grand Polyphony」Galerie Nord(パリ)、2016年、「okinawan portraits 2012-2016」Art Gallery Artium(福岡)、「考えたときには、もう目の前にはない」横浜市民ギャラリーあざみ野、2017年「OUTREMER/群青」アツコバルー(東京)。 主なグループ展に2016年「六本木クロッシング2016展:僕の身体、あなたの声」森美術館(東京)、「Body/Play/Politics」横浜美術館(神奈川)、2017年「日産アートアワード2017:ファイナリスト5名による新作展」BankART Studio NYK(神奈川)、2019年 「Oh!マツリ★ゴト 昭和・平成のヒーロー&ピーポー」兵庫県立美術館(兵庫)。 写真集に『okinawan portraits 2010-2012』『絶景のポリフォニー』『adrenamix』、『okinawan portraits 2012-2016』(いずれも赤々舎)、『CAMP』(SLANT)。 


Ryuichi Ishikawa


Born in Okinawa in 1984. In 2010 he studied under photographer Testushi Yuzaki. In 2011 he participated in the Shomei Tomatsu Digital Photography Workshop. He received the 35th New Cosmos of Photography Honorable Mention for "okinawan portraits" in 2012. In 2015, he received the 40th Kimura Ihei Photography Award and the Photographic Society of Japan Newcomer's Award.


Major solo exhibitions include, 2014 "RYUICHI ISHIKAWA" gallery Lafayette (Okinawa), "zkop" Atsukobarouh (Tokyo), "okinawan portraits" Place M (Tokyo), "A Grand Polyphony" Ginza Nikon Salon (2015 Osaka Nikon Salon); 2015 "okinawan portraits" The Third Gallery Aya (Osaka), "A Grand Polyphony" Galerie Nord (Paris); 2016, "okinawan portraits 2012-2016" Art Gallery Artium (Fukuoka), "Once thinking, nothing before eyes" Yokohama Civic Gallery Azamino; 2017 "OUTREMER / Ultramarine" Atsukobarouh (Tokyo).


Major group exhibitions include 2016 "Roppongi Crossing 2016 Exhibition: My Body, Your Voice" Mori Art Museum (Tokyo), "Body / Play / Politics" Yokohama Museum of Art (Kanagawa); 2017 "Nissan Art Award 2017: Exhibition of New Works by Five Finalists" BankART Studio NYK (Kanagawa); 2019 "Oh! Matsuri ★ Goto Showa / Heisei Heroes and People in the Japanese Contemporary Art" Hyogo Prefectural Museum of Art (Hyogo).


Photo books include, "Okinawan portraits 2010-2012", "A Grand Polyphony", "adrenamix", "okinawan portraits 2012-2016" (all published by AKAAKA Art Publishing, Inc.), and "CAMP" (published by SLANT).




<< Previouse 910111213141516171819