中井菜央『海の緒』

中井菜央『海の緒』


Book Design:須山悠里

発行:赤々舎

Size:H282mm × W222mm
Page:160 pages
Binding:Hardcover

Published in September 2026
ISBN:978-4-86541-236-9

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About Book


前作『雪の刻』において豪雪地で6年にわたり雪を撮り続けた中井菜央は、やがて、その雪をもたらす水へ、海へと向かった。対馬海流を辿って北上し、辿り着いた宗谷岬。境なく広がる水を前に、幼い頃から身近にありながら「黒い穴」のように感じていた琵琶湖の記憶が蘇る。目前の海と記憶の底の湖が響きあい、中井はこの地で撮ることを決めた。
季節を越えてその場所に身を置く。強風に荒れ狂う水、漁船の上から見る闇。何を撮るかをあらかじめ定めることなく、中井は、自らの深奥にある水脈が揺れるものを探すように、世界を見つめ続けた。

やがて、風がひたと止み、皺ひとつない薄布のように水面が静まり返る「トロ凪」に出会う。

荒れ狂う海も、静まり返った海も、水であることに変わりはなく、水は外からもたらされる力を受け入れ、そのつど異なる姿となって現れる。知識として「知る」ことと、身体を通して「識る」こと。その大きな隔たりに触れたとき、それまで確かなものと思われていた世界の輪郭が、ゆっくりとほどけ始めた。

水、海藻、草、石、砂、雲、風、氷、雪。

ひとつひとつに与えられた名前や形、ものとものとを隔てていた境界が揺らぎ、それらは崩れては組み替えられ、また別の世界を立ち上げていく。一滴の雨は水面を転がり、やがて海へと溶けていく。ひとつの滴と、星ほどの大きさをもつ水。個と全体の境も、目の前で揺らいでいく。

空を映す水面は、空の高さをそのまま深さへと変える。どこまでが空で、どこからが海なのか。世界を成り立たせている境界はほどけ、それまで別々のものとして見えていたものが、絶えず姿を変え、互いのうちへと移りゆく。中井は、そのただなかでシャッターを切り続けた。

海と空の境も、ものとものとの境も、その形さえ失われていく光景。一つと無数、極小と極大のあいだを融通無碍に行き来し、再び一つに始まる、果てのない流転。
そのなかに中井は、「決して知られない世界そのものへ繋がる緒」の糸口を見た。

海の緒。



Related Exhibition

中井菜央 個展「海の緒」

会期:2026年9月12日(土) 〜10月11日(日)

時間:13:00〜18:00(*9月26日はイベントのため17:30クローズ)

会場:POETIC SCAPE(目黒区中目黒4-4-10 1F)

入場無料

月、火、9/23(祝)休み

オープニングレセプション:
2026年9月12日(土)18:00〜20:00

ギャラリートーク:
2026年9月26日 18:00〜19:30

中井菜央 × 天野太郎(東京オペラシティアートギャラリー チーフ・キュレーター)
参加費等:1500円(トーク終了後ミニパーティあり)
要予約、定員20名

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中井菜央 個展「ゆれる水脈」

『ゆれる水脈――写真 表象のさきに』(みすず書房)刊行記念

会期:2026年9月11日(金) 〜10月4日(日)

時間:12:00〜19:00(土日 18:00まで)

会場:ふげん社(東京都目黒区下目黒5-3-12)

入場無料

月・火・祝 休み

・ギャラリートーク 中井菜央 × 大倉宏(砂丘館 館長)

日時:2026年9月20日(日)14:00〜15:30
参加費:1200円(会場観覧・オンライン配信)
トーク終了後に、レセプションを開催。
詳細

・ギャラリーガイドツアー(無料・申込不要)

日時:2026年9月27日(日)14:00から30分程度
参加無料



Artist Information

中井 菜央

1978年滋賀県生まれ。日本写真芸術専門学校卒業。モチーフだけを決め、あらかじめテーマを設定することなく制作を始め、撮影の中でテーマを見出してゆくスタイル。外界に在るもののさきに、自分の内界に潜むものを発見し、それをテーマに据えて、「私とは、世界とはなにか」を問い続けている。
写真集に、「繡」(赤々舎、2018)、「雪の刻」(赤々舎、2022)がある。みすず書房より文章と写真を合わせた書籍「ゆれる水脈」を上梓。

主な個展

2024 「THE TIME RULED BY SNOW」Ateliers de la Morinerie (フランス)
2023 「肖像のさきに」PLACE M(東京)
2023 「破れる風景」ie(札幌)
2023 「雪からはじまる」南魚沼トミオカホワイト美術館・鈴木牧之記念館
2023 「雪の刻」砂丘館(新潟)
2022 「雪のさき」TURNER GALLERY(東京)
2022 「雪の刻」PURPLE(京都)
2022 「雪の刻」横浜市⺠ギャラリーあざみ野(神奈川)
2021 「破れる風景」津南町農と縄文の体験実習館なじょもん(新潟)
2019 「繡」gallery Main(京都)
2019 「繡」Classic Lab 柳の家(新潟) 
2018 「繡」Roonee 247 fine arts(東京)
2014 「未明」銀座ニコンサロン、大阪ニコンサロン

主なグループ展

2026 「STILL/LIFE 静寂の余韻に」Bunkamura Gallery 8/(東京)
2025 植田陽貴「みずぎわ」中井菜央「ゆれる水脈」TURNER GALLERY(東京)
2023 「日本写真協会賞受賞作品展」富士フイルムフォトサロン (東京)
2023 「フォトシティさがみはら2022入賞作品展」ニコンプラザ東京(東京)
2022 「プリピクテジャパンアワードFire & Water」東京都写真美術館(東京)
2021 「人間より大きな世界へ」榕异美術館(上海)
2019 「KG+SELECT」元淳風小学校(京都)

受賞

2023 日本写真協会賞新人賞
2022 さがみはら写真新人奨励賞
2008  第4回「名取洋之助写真賞」奨励賞


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