李岳凌『伏流 Undercurrent』

李岳凌『伏流 Undercurrent


Book Design:鄭詔蓉(Cheng Chao-Jung)

発行:赤々舎

Size:H275mm × W254mm
Page:88 pages
Binding:Hardcover (Swiss binding)

Published in May 2026
ISBN:978-4-86541-229-1

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About Book


『伏流』は、台湾南部を流れる曾文渓流域を舞台に、土地の表面の下を静かに流れ続ける精神の痕跡をたどる写真集である。

李岳凌は、近代化の波に覆われた風景のなかに、なお息づく民間信仰や祭祀、土地に刻まれた記憶へと眼差しを向ける。神を憑依させる乩童の儀式、祠や墓地、草木、傷跡、血、川の流れ──それらは民族誌的な記録として提示されるのではなく、土地の奥底に脈打つ目に見えない生命の流れとして静かに浮かび上がる。

「伏流」とは、地下を流れる水だけではない。世代を超えて受け継がれてきた痛みや祈り、傷つきながらも生き続ける精神、そして人と土地を結び続ける見えない時間そのものである。李岳凌は、世界を説明するのではなく、世界が自ら姿を現す瞬間を待ち続ける。その静かな態度が、本書全体を貫いている。

写真はページのなかで互いに響き合い、独立したイメージを超えて、新たな意味の流れを生み出していく。表層に現れる色彩や形態は、やがて土地に潜む記憶や信仰、生命の循環へと読者を導いていく。写真集という形式そのものを通して、土地の深層を流れ続ける精神の「伏流」を経験させる一冊である。

撮影を重ねるなかで、李岳凌は、土地の記憶だけではなく、自らの人生もまた、この見えない「伏流」によって静かに形づくられてきたことに気づく。写真は世界を記録するためのものではなく、世界とともに写真家自身を変容させる営みでもある。『伏流』は、その変容の軌跡を、一冊の写真集というかたちで結晶させた作品である。



“岳凌は、創作における主体の意志を引き下げ、退かせ、そして伏流化する。だが、もし存在そのものが自らを顕
すのであれば、写真という創作において、創作者の存在意義とは何なのか?『伏流』は私たちに気づかせる ──
見るという行為は、意味付けられた倫理の受容ではなく、編集という行為は、意味の混淆を解き放つ〈構形の政治〉である ── 意味の伏流は、イメージの編集と配列の中から噴き上がり、それぞれの徴象が、より大きく、より複雑な〈身体〉を織り成していく。(中略)

『伏流』は、発見の詩学を実践する。ものは、ものとして見つめ、避けず、変化させず、「表象こそが本質である」という視覚哲学へと、私たちをも誘う。本作品の最後に収められた一枚の写真 ── 傾き、孤高にして誇り高く蔓を伸ばしていくその姿は、生命の伏流に対する、もっとも揺るぎない身の服従であり、敬意に他ならない。”

吳俞萱(ウー‧ ユシュエン)──詩人


Related Exhibiton

李岳凌 個展「伏流 UnderCurrent 」

会期:2026年5月16日(土)〜6月27日(土)

時間:11:00〜19:00

会場:朝代畫廊 (台北市大安區樂利路43號)

日休み


Artist Information

李 岳凌(リー・ユエリン)

1976年、台湾・台北生まれ。1998年 台湾 国立清華大学 電気工学科 卒業。2002年 台湾 国立交通大学 電子工学大学院 修士課程修了。2006年 フランス 国立高等装飾美術学校 ポストグラデュエート・ディプロマ。
2001年よりサウンドアートに傾倒し、環境音など日常の音を素材としたたサウンドスケープや電子音響作品などを中心に制作を行う。2011年に創作の領域を写真へと広げ、独学で写真に取り組み、このメディアに深くコミットしてきた。聴くこと、ヨガ、そして写真を、内的な気づきへと向かう相互的に結びついた実践として捉え、それぞれが現在という瞬間を新たに知覚する感覚を育むものだと考えている。

これまでに、アンダースロー(京都、2018年)、Place M(東京、2018年)、Lewis Elton Gallery(ロンドン、2014年)にて個展を開催。また「独書一格:現代写真集展」(未命名、台北、2025年)、「We Are Born by the River: Collaborative Notes of Millennium River Basin Culture」(台南市立美術館、2024年)、「麻豆大地芸術祭 A Thousand Names of Zengwun River」(台南、2022年)、「Aesthetics of Identity: Five Views from Contemporary Taiwanese Photography」(ペルー・リマ、2021年)、香港国際写真フェスティバル(2021年)、高雄写真フェスティバル(2018年)、台北写真フェスティバル(2012年)など、国際的な展覧会に多数参加している。

2017年に赤々舎より写真集『Raw Soul』を刊行。その他の共著の出版物に『Sneaking Photography Project』(共著、田園城市出版社、台湾、2022年)がある。
主な受賞歴として、Photo ONE’25 Portfolio Review 審査員特別賞(2025年)、Young Art Taipei ベストポートフォリオ賞(2016年)、TIVAC Young Photographers Award 審査員賞(2012年)、慶應義塾大学デジタルアートアワード 入選(2005年)、BIAS International Sound Art Exhibition 入選(2005年、2003年)。作品は台湾文化部アートバンク(2014年)に収蔵されている。


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